大正時代、当時の画壇では異端視されてしまうほどのけたはずれの大画面に、筆が躍動するダイナミックで力があふれる画風を推進し、自らの芸術を確立したことで知られる日本画家、川端龍子(かわばた・りゅうし)。近代日本画の巨匠と称えられているその作品は今も観るものの心をひきつけてやみません。
大田区立龍子記念館では2024年1月現在、力強い白い波しぶきが龍の姿に表現された「渦潮」(1956年作・241×725cm・大田区立龍子記念館蔵・下の写真)が展示されています。上の写真で紹介した「臥龍」(1945年作・243×485cm・大田区立龍子記念館蔵)も近く展示される予定です。(画像は共に大田区立龍子記念館提供)
龍子は1885(明治18)年和歌山県に生まれ、19歳の頃から大森の親戚の家に身を寄せ、新井宿(現在の南馬込)で創作活動を続けました。そして1929(昭和4)年、自らの芸術を追求し美術団体・青龍社を創立、1963(昭和38)年には、自身の発意と設計でアトリエのある自宅前に龍子記念館を開館しました。「龍の落とし子(タツノオトシゴ)」をその名の由来としているとおり、龍を表した作品をはじめ、龍子記念館は上から見るとタツノオトシゴの形になっています。また、龍子公園内の石畳はあたかも龍を意識したかのようにゆったりしたカーブを描き、石の配置は龍のウロコのようにも見えます。
1966(昭和41)年に龍子が亡くなり、のちに龍子記念館の運営を行っていた社団法人青龍社が解散、1991(平成3)年、大田区が運営を引き継ぎ大田区立龍子記念館としてスタートしました。同館では大正初期から戦後にかけて大作を中心に140点あまりの作品を所蔵し、多角的な視点から龍子の画業を紹介しています。
また、記念館の向かいにある龍子の旧宅(1951年建造)およびアトリエ(1938年建造)も保存され龍子公園として公開されています。園内では四季折々の植物も楽しめますが、終戦間際に空襲によってできた爆弾跡を龍子が池として造成した「爆弾散華の池」や伝俵屋宗達「桜芥子図襖」が飾られていた持仏堂(再現)などを見ることもできます。
龍子記念館および龍子公園の旧宅とアトリエは、今年度中に国の有形文化財として指定される予定です。辰年の今年、指定されるのも何かの縁を感じさせます。
何かと心を乱される事象が多い昨今、辰年を迎えて、龍子が描いた龍の作品を堪能しつつ、芸術家が細部までこだわった作品とも言える建築物をじっくり見て回るのは目の保養であり心の栄養になることでしょう。
3月3日まで地域連携企画展「川端龍子の作品とともに観る大田区美術家協会の現在」を開催しています。
龍子記念館
住所:東京都大田区中央4-2-1
交通:JR大森駅西口から東急バス4番「荏原町駅入口」行乗車、「臼田坂下」下車、徒歩2分/都営地下鉄・浅草線 西馬込駅南口から南馬込桜並木を通り徒歩15分
開館時間:9:00〜16:30(入館は16:00まで)
入館料:一般200円/中学生以下100円/65歳以上、6歳未満は無料
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)
最新の展示情報は公式サイトをご確認ください
建物を上から見た様子はGoogleマップをご覧ください
龍子公園
入園時間:記念館開館日の10:00〜/11:00〜/14:00〜(各回30分程度開門)
店名・施設名 | 大田区立龍子記念館 |
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最寄り駅 | 大森駅(京浜東北線)、西馬込駅(都営浅草線) |
住所 | 東京都大田区中央4-2-1 |
定休日 | 月曜日(祝日の時は翌日)、年末年始、展示替え期間の臨時休館 |
Web | https://www.ota-bunka.or.jp/facilities/ryushi |
お問い合わせ | 03-3772-0680 |