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おーたふる 大田区商店街ナビ|国際都市大田区の魅力的な商店街

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特集 / Feature

大田区のさまざまな魅力を発信

2022.04.22

大田区の若手経営者たちの取組・舞台裏のSTORY#01

大田区の次世代リーダー育成塾は、区内商店街の持続的な発展のため、意欲的・活動的な若手商業者に対して以下の2つの体験を提供するためのプラットフォームです。
◎意欲的、活動的な若手商業者同士が、地域を越えた良質なネットワークを形成する機会を提供する。
◎業種業態の違う複数の店舗が共同企画する事業の実施により、商店街イベントやキャンペーンの疑似体験の場を提供する。

新しいひとの流れを生み出すイベントを~地域のひととお店の出会いを創出

コロナ禍の今こそ、地域に新しいひとの流れを創出したい。「大田区で暮らすひとと、大田区の魅力的なお店やアーティストとの出会いを目指してマーケットを開催しました。お客さまの出会いの場を作ってたはずなのに、気付けば運営者である私たちもたくさんの出会いに恵まれました」。笑顔でそう語るのは、2021年度「次世代リーダー育成塾」リーダーの大屋幸子さん。公私にわたり地域活性事業に取り組む大屋さんに、「まちなかてくてくマーケット」舞台裏のSTORYを取材した。

大屋幸子さん  
・2021年度「次世代リーダー育成塾」グループリーダー
・株式会社大鵬 代表取締役 
・ダイニングバル「HANEDA SKY BREWING」 オーナー

グループメンバー
・HANEDA SKY BREWING(飲食)
・弁護士法人 四季の風総合法律事務所(サービス)    
 ・ラ·ファリーナ(飲食)  
 ・大田マーチング委員会(サービス)            

取材日:2022年2月25日 取材・記事:MY STORYライター 武藤花奈

コロナ禍こそ「地元の町をてくてく歩こう」

■2021年度の次世代リーダー塾で企画したイベント「まちなかてくてくマーケット」について教えてください。
2022年1月、石川台・上池台・洗足池周辺エリアの若手オーナーのお店などが出店するマーケットを開催しました。遠出が難しい今だからこそ、大田区の素敵なお店やアーティストと地域住民に出会いの場を。出会いをきっかけに、お客さまが町のなかをてくてくと歩き、地域に新しいひとの流れを生み出せたらいいなと考えました。
洗足池駅そばのコーヒーショップ「AOI COFFEE(上池上)」のイベントスペースをお借りし、地元で人気のフードやドリンク、ギフトを楽しめるブースと、手帳制作のワークショップを開きました。また、会場では「てくてくアンケート」と題して、「地元のひとだから知っているおすすめショップ」の推薦コーナーを作りました。来場者に、お気に入りのお店を地図上に付箋で貼っていただき、この情報をもとに大田区全体のショップマップを作りました。 実は実施日の1週間前に新型コロナウイルスの感染急拡大によるまん延防止等重点措置が発令され、集客はずいぶん頭を悩ませました。反響がありすぎても困るし、少なすぎてもイベントとして成り立たない…。結果的には1日の来場者数は約120人。来場時間が集中しすぎない良い塩梅でホッとしました。1日を通して穏やかに賑わいました。

■来場者の分散に成功した要因は何だったのでしょうか?
物販のブースを2部の入れ替え制としたことが、来場者の分散につながったと推測しています。前半は「炭火焼き 串ろう(東雪谷)」の焼き鳥、「さつき濃 神谷園(東雪谷)」の抹茶ラテに、「AOI COFFEE」と「炭火焼き 串ろう」コラボのコーヒー焼酎など。後半は「ラ・ ファリーナ(東雪谷)」のパニーニ、弊社「HANEDA SKY BREWING(羽田)」のクラフトビール、「タバネルブックス(東雪谷)」によるカラフルな海外絵本の販売、という内容でした。「大田マーチング委員会(池上)」と地元の人気版画作家・ひびのさなこさんのコラボレーションによる手帳制作のワークショップは1日を通して実施し、多くの来場者が立ち寄ってくださいました。

■グループでイベントを企画した感想はいかがでしたか?
グループメンバーに恵まれ、このメンバーに出会えたことが大きな収穫でした。飲食業は私を含め2名、印刷・デザイン業1名、弁護士1名。事業内容も活動エリアもバラバラですが、互いの忙しさを思いやる優しいひとの集合体で、それぞれの意見を尊重しながら進めることができました。
イベント企画を通して感じたことは、同じ「まちづくり」というテーマでも、メンバーそれぞれで視点や感性、ものの捉え方が違うこと。石川台在住のメンバーから見た大田区。弁護士から見たまちづくりの捉え方。視点が違えば着地点も違うことは、これまで地域活性事業ばかりしてきた私にとっても、たくさんの学びがありました。
お客さまに出会いを提供する今回の企画を通じて、運営サイドである私が出会いに恵まれました。今まで降りたことがなかった駅周辺でランチをしたり、知り合いに会ったり。私が大田区をてくてく歩き回っています(笑)。

■次世代リーダー育成塾の経験を、今後どう生かしていきたいですか?
今期の活動期間は終わりましたが、グループのメンバーで、今回できなかった内容を補助金がなくてもやってみようと計画しています。自分だけでは得られなかった出会いのチャンスをいただき、大田区商店街連合会と次世代リーダー育成塾に大変感謝しています。ひとのつながりは宝物、大切に生かしていきたいです。

クラフトビールは地域応援コンテンツ

■大屋さんのクラフトビール事業についてお聞かせください。
クラフトビールとは小規模な醸造所で作られるビールのこと。弊社は「HANEDA SKY BREWING」内の醸造設備で、店内でクラフトビールを醸造・販売しています。
「池上エール」、「黒湯エール」、「大森貝塚エール」など、当店のビール名は大田区の地名や観光スポットにちなんだものばかり。ビール名を聞いて、池上本門寺や銭湯、地域に関連する友人知人の顔が思い浮かんだ方もいるのではないでしょうか。その効果は広告と同じで、私はクラフトビールのラベルを広告物として捉えています。地域だけでなく、プロバスケットチーム「東京羽田ヴィッキーズ」のオリジナルラベルのビールなども作っており、このビールを飲むことでチームを応援できるんです。
こんな風に、ビールというコンテンツで地域やひとのつながりを生み出し、地域を盛り上げていきたい。誰かが誰かを応援する仕組みを作りたい。それだけを考えて事業を展開してきました。

■どんなきっかけで、クラフトビール事業を手がけるようになったのでしょうか?
私は35歳の時、「いつか自分の店を出したい」という夢を持ちながら、子どもの学費を稼ぐために保険会社で働いていました。偶然、保険会社のお客様からのご縁で、クラフトビールの販売元を立ち上げることになりまして…。負債を抱える義理の実家・株式会社大鵬の事業という形態で、2016年に蒲田に「羽田バル」を出店・経営することになりました。

■地域とビール、という発想はどこから生まれたのでしょうか?
初めての経営は一筋縄にはいかず、経営も運営もガタガタ、クラフトビールも全然売れず…。クラフトビールの存在意義すら疑ってしまう状況のなか、どうしたら売れるか必死に考えました。「羽田空港がある大田区は世界の玄関口。地名を生かさない手はない!」と考え、商店街と連携し、ビールで地域を活性する今の事業スタイルになりました。2年ほどで軌道に乗り、義理の実家が抱えていた借金も無事返し終えました。これまでの地域活性事業から白羽の矢が立ち、2020年には羽田イノベーションシティ内に、念願の醸造所併設のダイニングバル「HANEDA SKY  BREWING」を出店しました。

■地域活性とともに歩んできたのですね。そんな大屋さんの今後の目標を教えてください。
大田区に恩返しすることです。クラフトビール作りは多くの大田区の方々に出会い、支えられて今の事業があるため、大田区への感謝の気持ちがすごく強いです。ここ数年は障がいがある方の雇用創出と、大田区の町工場とのコラボレーション事業に力を注いでいます。

■なぜ障がい者雇用を考えるようになったのでしょうか。
ビールづくりの工程には、とても単調な作業があるんです。ふと、この作業は障がいがある方に適した仕事なのではないかと考え、調べ始めました。その結果分かったのは、予想どおり知的障がいがある方のなかに、単調な作業を真っ直ぐに続けられるタイプの方がいること。国内で既にチョーク作りなどの成功事例があること。障がいがある方が自立するためには、月5万円稼ぐことが必要という現実でした。
私も同じ親という立場から、障がいがある方の親御さんにとって少しでも安心できる雇用環境を整え、自立を支えたい。そう考え、障がい者の雇用創出に向け動き出しました。

■大田区の町工場とのコラボレーションについてもお聞かせください。 大田区には、優れた技術力を持つ町工場が数多くあります。その技術で、障がいがある方でも安全に利用できる醸造設備を作っていただき、池上駅そばに新しい醸造所を作る予定です。見学可能とし、醸造体験ができる施設にする計画です。クラフトビールを通して、地域の皆さまに町工場やその技術力に親しんでいただける場にしたいと考えています。大田区産の醸造設備と、その設備を使用した障がい者雇用、という組み合わせを全国に広げていきたいです。

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